病院スタッフが語る 「わたしたちの
チーム医療」

Q.1

出雲市民病院が実践する
チーム医療における、
各職種の役割を教えてください。

松原: リハビリテーション(以下、リハ)科の医師はよく「オーケストラの指揮者」に例えられますが、私自身は「多くの職種と共通言語を持っている医師」という認識で、全体を指揮すると言うよりはむしろ私が間に立って職種と職種とをつなげることが、自分の1番の仕事だと思っています。職種の中ではもちろんリハ療法士とのやりとりが非常に密接ですが、その他の職種とも日々連携をとっています。

加藤: リハ療法士は、患者さんの病状や栄養状態に合わせてリハの内容や運動量を決めて進めていくので、どの職種とも深く関わっています。リハの進捗度合いが退院後の生活にも関わってきますので、特に退院支援を行う看護師とは、つながりが強いかもしれませんね。

馬場: 薬剤師は、薬剤による運動機能、嚥下機能などへの影響を各職種に情報提供したり、投薬の安全性確保を図ったりしています。
もちろん主治医が確認する部分でもありますが、薬剤師としての立場から見て、気づくことも少なからずあるので、なるべく早い段階で情報提供することが大切だと考えています。

山田: 看護師としては、普段から患者さんのそばにいて、医療面や生活面を主に援助させていただいています。患者さんに近いからこそ分かる情報や、ちょっとした変化を、他の職種に投げかけることが大事な役割なのではないでしょうか。

山加: 管理栄養士としては、患者さんの栄養状態を良くしてリハの進展につなげ、退院に向けて調整していくことが重要です。お薬や点滴のことなども考慮し、トータルでどれくらい栄養が入っているかを確認し、栄養が足りていない場合には、どうしたら食べられるのかを探すのも大切な役割です。

Q.2

チーム医療の意義とは、
どのようなことでしょうか。

加藤: 患者さんによっては個人の事情から、家に帰れないという方もいらっしゃいます。そういう方に、リハだけして「運動機能が高まったから帰れますよ」では、我々の役割は果たせていないと思います。そんな時も、この場にはいませんが、チーム医療の一員である医療ソーシャルワーカーが介入することで、社会福祉の立場からも支援することができます。自分の専門領域では対応できないことも、チーム連携によっていろんなことが可能になり、患者さんのお役に立てるようになります。

松原: 私自身、随分前ですが、病気のことしか考えていない時代がありました。当時はどのくらいのカロリーが必要でそのうちのどの程度摂取できているのか、リハの状況はどうなのか、薬はきちんと飲めているのか、家族の介護力はどうかなど、そんなことは全く考えず、病気の治療が終わったら「はい退院です」という状況でした。今こうしてチーム医療を実践していると、それぞれの職種が専門性を発揮し、患者さんに必要なものを提供していかなければ、いい形で退院することができないということを実感します。当院のようにチーム医療が当たり前になり、成熟してきている環境で働けるのは、医師としても非常に幸せなことだと感じています。

山加: 私はもっと身近なところでも、いろいろな意義を感じています。以前は栄養士は厨房にこもって調理をすることが多かったのですが、チーム医療の一員として病棟に出始めるようになったことで、職員同士が声をかけやすくなりました。すると「最近○○さんは入れ歯の調子が悪い」といった、何気ない情報交換をする機会が増え、じゃあもっと食事を柔らかくしようといった変更がしやすくなり、また「よく食べるようになったよ」という声や、主治医からも「栄養状態が良くなってきたよ」といった声も聞くことができるようになりました。

山田: こういったやりとりは日常的に行われているので、患者さんのためのフィードバックが素早くできるではないかと思います。

馬場: チーム医療の意義でもあり、この病院の特徴でもあることですが、ドクターが他の専門職の意見を尊重してくれるので、とてもいい関係が築けていると思います。

松原: そうですね。例えば、私達が入院時回診時の摂食嚥下スクリーニングで服用中の薬の剤型が不適切と判断した場合、薬剤師が医師へ情報提供をすることで適切な剤型に変更したり、他薬へ処方変更したりというようなことは日常的に行われています。そういったことが日々非常にスムーズに行われるのも当院の特徴かもしれないですね。

馬場: より良い医療のためであれば、医師にもどんどん意見してくださいというスタンスは、大きな特徴です。

山田: 私は県外の病院や大学病院で勤務していた経験が長いのですが、この病院のように、いろいろな職種で話をすることなんてありませんでした。世間話くらいはしても、リハ療法士や薬剤師と、それぞれの専門に関わるような話をすることはなかったですね。こちらに勤務するようになり、私自身の視野も広くなったのではないかと思います。

山加: そうですよね。こういう考え方があったか、こういう食事環境設定の仕方があったかなど、とても勉強になりますね。

松原: 専門職にはそれぞれが得意とする分野があります。例えば自分がこうかなと思ったとしても、他職種の意見を聞いてみると、自分の思いが意外と的外れだったりすることもあると思います。専門職同士のつながりによって、自分1人ではできないことができるというのは、チーム医療の大きな意義ですね。

Q.3

さらなるレベルアップのための課題とは、どのようなことですか。

加藤: 今までは自分の専門性の部分で関わることが主体だったので、いろんな職種が持っている情報を、誰が見ても分かるように見える化することを、今、課題にしています。そしてベッドマネジメントのシステムを作ろうと動き出しているところですが、まだうまくいっていないところもありますね。

松原: そうですね。今までも、定例カンファレンスでいろんな職種の情報を持ち寄ってはいたんですが、誰もがいつでも見られる状況ではなかったですね。リハの進捗状況や、薬の調整、看護指導の状況、食事のことなど、いろんな情報が可視化されれば、その患者さんがいつ退院できそうかということを、誰でもいつでも見られるようになります。そしてベッドマネジメントという、さらに踏み込んだことにも取り組めるようになるといいですね。

山加: 入院時の回診をさせてもらうことで、ある程度いろんな患者さんに介入できるようになったとは思うのですが、入院時に食べられていた方が、途中で食べられなくなったり、退院時のフォローが十分にできなかったこともありました。今後の可視化に関わらせてもらうことで、さらに患者さんのお役に立てるようになることが課題です。

山田: 看護としても、可視化したシステムをうまく活用し、日々の業務と退院に向けた支援を並行して行うことで、もっと安心して退院後の生活に移行していただけるようにしなければと考えています。

馬場: こちらの病院に勤務するようになって、他の職種の仕事を目の当たりにして、それぞれの職種がそれぞれの専門性で患者さんと向き合っていることが、とてもいい刺激になっています。これまで患者さんに直接的にはあまり関われていなかった職種でもあるので、もっと薬剤師としてできることを追求していきたいと思っています。

松原: 最初はチーム医療を始めるだけで大変だったと思うのですが、少しずつ成熟してきたからこそ、次の課題が見えてきたということではないでしょうか。今後もレベルアップし続けるためには、課題がなくなることはないと思います。常により良い医療を目指し、チームで取り組んでいきたいですね。